第12回 りんごもパンダも犬もロゴじゃない。

今日はちょっと本編からはそれるんですけど、周知されているようで正しく周知されていない、デザイン用語についてのお話を書こうと思います。
一番思うのが「ロゴ」という言葉。今回は、ロゴ周りの言葉で正しい定義について整理していこうと思います。

ところで「Macを作っているアップルのロゴは何?」という質問に対しての答えはおおむね予想できますね。グーグルで画像検索するまでもなく、みなさんの頭にはあの「リンゴマーク」が浮かぶと思います。慣例的にそうなっちゃってますが、本来の定義では間違いなのです。

ロゴという存在の成り立ちについて考えれば理解できます。広告物では、何度もクライアント企業の名前が登場します。活版印刷の時代では何度も同じ文字列を組む必要がありました。そのため、効率化から(または強調のために)その企業名の文字をいちいち組むのではなく「つながった連字」、つまり一つの活字として鋳造してしまおうというのが、ロゴの始まりです。正式にはロゴタイプ、つまり「連字(ロゴ)の活字(タイプ)」ってわけです。転じて、現在のロゴタイプは「企業名や団体名などを一つのまとまりとしてデザイン」したもの。ということになるわけです。

ロゴというのは「ロゴタイプの省略形」と考えられます。ですので、「ロゴ」=「ロゴタイプ」という単純な理解で構わないと思います。ここで重要なのは、文字要素がないものは基本的には「ロゴ」とは呼ばないんです。

じゃあ、あの団体のパンダとか、あの音楽会社のスピーカーに耳を傾ける犬とかのアレはなんて呼べばいいんでしょうか?

そこに「シンボル」という呼称が用意されています。シンボルという言葉は記号論(本書P17)でも出てくる考えですが、コーポレートアイデンティティの用語としては、特定の企業を象徴する記号のことを指します。同じ意味に「マーク」という言葉があります。日本では「シンボルマーク」とも呼ばれますが、これは和製英語で意味が重複しています(馬から落ちて落馬、みたいな)。

昭和のCI資料などを参照すると、象徴記号はきちんと「マーク」「シンボル」「シンボルマーク」のいずれかの表記で書かれているので、それらが「ロゴ」と呼ばれるようになったのは、意外と最近のことなのかなあ、なんて思っています。

blog12

ところで「ロゴマーク」って言葉もありますよね。これも無理がある言葉だと思いますが、正しく解釈しようとすると、すくなくともりんごやパンダや犬のことではないと思います。

僕が考える1つ目の解釈が「ロゴ&マーク」が慣用化されたもの。ロゴとマークが組み合わされたものを「ロゴマーク」と呼ぶことにしようと。ただし、この組み合わせについて、もっと適切な言葉があります。それは「シグネチャー」と呼ばれる用語。シグネチャーはシンボル、ロゴタイプ、あるいはタグライン(企業のスローガンなどを標したもの)などをどう組み合わせるかを定義したもので、手紙の署名のように定型で使われることから来ています。

なので「ロゴマーク」=「ロゴ&マーク」説も今ひとつしっくりこないんですよね。「ロゴマーク」って言葉で、一番適切と思われる使い方はこうであろうと思われます。「シンボルが存在しない企業で、ロゴタイプがマーク的に使われるようになったもの。」つまり「ロゴタイプのマーク」という意味(これもちょっと意味重複してますけど)。これなら、まあ納得がいきます。SONYとか分かりやすいですよね。しかし、ロゴマークって言葉はやはり和製英語の域を出ていないと思います。

また、モノグラムという言葉がありますが、これは「通常2文字以上の頭文字などを組み合わせて象徴化したもの」というのが正しい意味です。有名なバッグブランドのモノグラムが有名なために、モノグラムを「シンボルなどがパターン配置されたもの」と勘違いしている方もいらっしゃるような気がします。

とまあ、理屈っぽい話ばっかりしてきましたが、これらの用語が整備されてきちんと使われれば、誤解も少なくコミュニケーションができるのかなあ…、なんて思います。
こういう説教くさいことを言うと、「言葉は変わるものですよ!」というご指摘を受けたりします。わ、分かってますよ!!!

次回は最後の章「印刷篇」のお話をしたいと思います。