第15回 モテ男子とサンセリフ書体の関係

こんばんは、カイシです。「How to Design いちばん面白いデザインの教科書」、おかげさまでいろんなところから感想をいただきます。隠しターゲットだったデザイン会社の代表の方の「部下に読ませるために買いました」が意外に多いのが嬉しいです。どんどん社員教育に使ってください。

今日は欧文書体についての話です。
「タイポグラフィー・ガール」という書体をテーマにした頭のおかしいラブコメをTwitterで不定期連載していますので、よかったら(超ひまなときに)読んでください。

書体デザインの魅力は何にあるんだろう?ってことを考えますと、「書体デザイナーの人格がおのおのの書体に宿るのではないか?」ということにたどりつきます。著名な書体設計者がデザインした書体は多くありますが、共通して言えることはおおむね「みんなが使ってもらえる普遍的な書体をつくろう」という意志から書体を開発するのですが、最後はどうしてもその設計者の個性がにじみでてしまう、というところなんじゃないかと思うのです。

匿名性と顕名性。このはざまでデザインという分野自体モヤモヤしていて、書体デザインはその象徴的存在なのではないかと。デザインを愛でる文化というのは、いわば匿名性の中でにじみでちゃった顕名性をニヤニヤする文化です(と言い切ってしまいます!)。

で、逆手に取って「書体に魂が宿るのなら、書体を擬人化しても何の問題もないよねー」ってのが「タイポグラフィー・ガール」の発想です。

「How to Design いちばん面白いデザインの教科書」では、これだけは知っておきたい欧文書体のジャンル分けについて書いています。デザイナーはこれを覚えるとすごく楽しい!例えば「あの広告に使っていたのは“ヒューマニストサンセリフ”だな」とジャンルだけ覚えれば家や職場で似たような感じのデザインを試せるのです。

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本書よりサンセリフ体の分類。広告出版物の書体の中でこの4つのどれに当てはまるかがすぐ分かると、プチ書体ソムリエの気分になれます。

サンセリフ体とは書体の線が均一な感じで(実際には等幅ではないです)、端点の飛び出た爪部分(=Selif)が無い(=Sans)ことからの呼称です。上の図だと、上から「グロテスクサンセリフ」「リアリストサンセリフ」「ヒューマニストサンセリフ」「ジオメトリックサンセリフ」という分類になります。

「グロテスクサンセリフ」はサンセリフが看板書体として生まれた初期の書体で、無骨な感じが顕著に出ています。「アクチデンツグロテスク(ヘルベチカのお父さん)」が代表的です。「R」の先の線がヘルベチカのように曲がってなくてまっすぐです。

この書体をずっと見ていて「番長(不良)キャラ」がこれに当たるのかなって思ったのが始まりで…。不良キャラって無骨で、不器用なイメージじゃないですか。だからこそちょっと垣間見える繊細さに引かれる。

「リアリストサンセリフ」はモダニズムの権化、ユニバース(Univers)しかり、ヘルベチカ(Helvetica (Neue))しかり、みんなに愛される優等生万能イケメンキャラ。かつイケメンの高スペック。書体界の出来杉くん。

「ヒューマニストサンセリフ」は上記と違ってローマン体(カリグラフィー起源)の骨格を使ってストロークの強弱を無くしサンセリフに改変したもの。これはいわゆる「癒し系男子」ですよね。少年的な愛くるしい感じ。Appleのデフォルト書体「ミリアッド(Myriad)」や葛西薫さんがインタビューで好きとおっしゃってた「ギルサン(Gill Sans)」とかです。軟弱系男子があえて好きな女子はヒューマニストサンセリフがおすすめです。

最後の「ジオメトリックサンセリフ」は幾何学形態によせた合理的かつ図形的な書体。これは、あれです。モード系男子。「アバンギャルド(Avant Garde)」とか「フーツラ(Futura)」はおなじみです。「O」の文字は正円に近いが、正円ではない、というところが外しのモードっぽいです。

このように、サンセリフ書体一つとってみても、「不良系」「万能イケメン」「癒し系」「モードお洒落系」と分かれるのが面白い!

では、サンセリフと対で語られるローマン体は何に例えられるか?

サンセリフが男子ならローマン体はやはり女子でしょう。自著「How to Design いちばん面白いデザインの教科書」でも書いていますが、ローマン体は時代との結びつきが強いです。つまり古いか新しいかがそれぞれの魅力に直結しています。古いもよし、新しいもよしです。オールドローマンは熟女系、モダンローマンはロリ系といったところでしょうか。これを語りだすと…以下自粛……。

次回のテーマは「絵が上手じゃないとデザイナーになれないの?」です。