第20回 ADCD(元ネタ知らない人はお父さんに聞こうね)。

今回からは1月14日発売の「デザインのプロセス 7人の気鋭デザイナーに学ぶ仕事のやり方、考え方」の内容について、各章をダイジェスト的に追いながら紹介していきたいと思います。

この本は、言い出しっぺの私の章から始まります。
「CDジャケット」の章!
CDジャケット……。正直この章から初めてよいかという葛藤はありました。というのはCDバブルは今からおよそ20年前。CDが売れなくなった時代(今では音楽メディアそのものが売りにくくなったとも言われていますが)になって、久しいです。

おそらく、CDジャケットという分野自体、近い将来確実に消え行く媒体でしょう。しかし、このCDジャケットというデザイン分野は麻薬的な楽しさがありますし、未だに「音楽パッケージ」という分野に関わりたいと思っている人は耐えることがありません。

僕もこれまで200枚以上のCDジャケットをディレクション・デザインしてきて、何が魅力的なんだろうと、分析したことがあります。いくつか特に「楽しい」部分を挙げてみます。

1. 聴覚から視覚へのメディア変換、が楽しい!
音源を何度も聴いて、そこから浮かぶイメージを定着させるCDジャケットの分野。コンセプチャルに作る場合もありますが、ときには言葉を介さない非言語から非言語への直接変換。これがものすごくスリリングです。

2. 世界作りに参加している感じ、が楽しい!
CDジャケットはアーティストのディスコグラフィーに残り続けます。だからこそ、緊張感が走りますし、悪いものは残せない。そして、音楽を作るわけではないのですが、パッケージ制作を通じて音楽の世界作りに参加しているという感じが楽しいです。

3. 2次元3次元を行き交う媒体特性、が楽しい!
CDジャケットはとても面白いメディアで、店頭時やネット上では、常に「ジャケ写」と呼ばれるブックレットの表紙部分の画像が、ターゲットに対して訴求します。しかし、購入後はそれらを含めたパッケージ全体が機能し、また、平面印刷物で構成されているにも関わらず、立体的な時間軸を持った展開(お客さんがパッケージをあけ、ブックレットを取り出し、CDをとるというプロセス)を設計できるのです。

言い出せば、切りがありませんが、上記というのは、もしかすると、CDジャケット以外の様々な要素を、コンパクトに凝縮したもの(コンパクトディスクだけに…なんちて)かもしれません。

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撮影現場!おさめました。全部言葉にしながら。

今回どうしてもやりたかったのが、「フォトディレクション」の部分です。

アーティストとどう世界観を共有し、どのようにスタッフにそれを伝え、現場で、臨機応変に作っていく方法。それを極力「言語化」しました。

そう、この書籍全般で大事なことは、(センスだ、感覚だと片付ける前に)まず「言葉にしてみる」ということなのです。

現場でのディレクションなんて、言わせる人に言わせりゃ、ほぼ「ノリ」です。しかし、その「ノリ」の法則性を言葉で伝えるのは、本当に難しいことです。今回それを容易な言葉に置き換えるところから、原稿執筆をスタートさせました。

これに協力していただいたのが、MOON CHILDやSCRIPT、Ricken’sなどのバンド/ユニット活動を経て、ソロとしても活躍されているミュージシャンのササキオサムさんです。ササキさんとは、以前にライブアルバム作りでご一緒させていただいたのですが、今回は企画の立ち上げから、がっつりご協力いただき、ニューアルバム「Thrill of It All」のジャケットが完成するまでの一連の流れを、全て密着し、書籍におさめました。

一連の流れって、もう全部です。打ち合せから、企画提案から、撮影から、レタッチから、レイアウトまで。

今回親しいスタッフだけを集めて、本当に少人数でコンパクトに進めたプロジェクトでしたが、要素が凝集されているだけあって、「ああ、デザインのプロセスってこういう本なんだ!」と理解いただける、いわばチュートリアル的な章になったと思います。

もう一つ、今CDジャケットの別の意味について考えています。音楽パッケージには90年代とは別の明るい未来があるような気がしていて、それが明瞭に見え始めていますが、その話はまた、別の機会に。

次回は、タキ加奈子さんの「フリーペーパー」の章の魅力にせまってみたいと思います!