第21回 無料、だからこそ。

「デザインのプロセス 7人の気鋭デザイナーに学ぶ仕事のやり方、考え方」、おかげさまでいろいろな所で良い評判をいただきます。多くの書店さんのデザインコーナーで良い売り場所に置いていただいており、書店さんに足を向けて寝られません(なので全国の書店さんを地図上にプロットして、寝るべき角度を計算しています。)

今回紹介するのは「フリーペーパー」の章。エディトリアル(編集)デザインという分野、携わっているデザイナーさんは専業的にされている場合が多く、逆に関わったことのない人にとっては、同じデザイナーでも未知の分野だと感じられる方も多いのではないでしょうか。

だからこそ、本当のプロの仕事を知ってもらいたいという思いで、タキ加奈子さんに執筆をお願しました。
エディトリアルデザイナーは、常に編集者と二人三脚で作業を進めていきます。感覚的に見える表現の裏には、情報の積み重ね、分類、提示の手段など、理知的なプロセスが存在します。そんなわけで、エディトリアルデザイナーにも当然、編集的な考えや理解が求められます。
この章は、非常に多くの情報やプロセスが密集していますが、そんなタキさんの、きめ細やかな情報編纂力に助けられて、とても読み易いのです。

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グリッドとランダムレイアウトの比較。揃えのデザインには崩す要素、崩しには揃えの要素が必要なことが、わかりやすく見て取れます。

企画から誌面構成のプラン、撮影ディレクション、レイアウトデザイン、校正まで、エディトリアルデザインのアートディレクターがこなしていくプロセスはたくさんあります。それらに一貫していることは、冒頭でタキさんが「ページというレイヤーを「一冊」という物質を通して表現すること」と示しているように、まさにページをめくるという読み手の時間軸を通した、「体験をデザインすること」ではないかと思いました。

前回もちらっとお話ししましたが、グラフィックデザインはけして静止した、時間の概念が存在しないメディアではありません。視線の動きや、ページを繰る操作など、時間軸を考えるということは重要で、それがグラフィックデザインの面白さを担っている一つの要因でしょう。この章ではたびたび、そのようなことに触れられています。

タキさんは以前デザイン誌で漫画を連載するなど、マルチに活動されている方で、なにより人を楽しませよう、喜ばせようというホスピタリティーに満ち溢れている人だと思っています。文章の端々からそんなエンターテインメント感が滲みでていて、僕は読みながら、何度もニヤリとしました。そんなタキさんの文体自体もお楽しみいただけたらなと思っています。

次回は「パッケージ」の章、増永明子さんの記事について紹介しようと思います!