第23回 小さくまとまらないために、小さくまとめる。

カイシです。今日は僕の大好きなポスターの話ですよ。広告の中でも特に花形の一つと言われている交通広告。ポスターはその中でも王様といっても良いのではないでしょうか。最近は、乗客はスマホの画面に夢中、デジタルサイネージは台頭してくる、と紙のポスターにとっては不遇の時代になってきました(それはそれで新しい表現に期待が高まるのですが)。

書籍「デザインのプロセス 7人の気鋭デザイナーに学ぶ仕事のやり方、考え方」は7人のデザイナーの共著です。僕がその人の作るデザインが大好きなところから、6人のデザイナーを指名させていただきました。ポスターを担当しているのは、広告代理店、博報堂に在籍するアートディレクターの原野賢太郎さんです。

今回テーマとして取り上げてもらったのは、博報堂のリクルート、入社案内の一環としてのキービジュアルを反映させたポスターでした。完成作品は書籍にも掲載していますが、とても力強く、一瞬でメッセージが伝わるような高い視覚伝達能力を有した作品です。

コンセプト、美しさ、ディティール、分かりやすさ、いろいろな視座でポスターは評価されますが、その中でも原野さんが特に大事にしていることは「早く、強く訴求できる、ビジュアルのアイデア」だろうと推察できます。

ビジュアルアイデアを咀嚼、あるいは伝えるために、最初に作られるものがアイデアスケッチです。これはよく「サムネイル」と呼ばれます。英語で書くと「Thumbnail」、親指の爪、転じてとても小さいという意味を持ちます。そうです、サムネイルは、小さく書く必要があるのです。
なぜ小さいと良いのか?描くのが早くなり、たくさん描けるから?…もちろんそういう理由もあると思います。しかし、一番大事なのは「絵が小さいと、あまり重要でない要素は省略する必要があるので、アイデアの芯の部分が浮かび上がってくる」だということだと思います。また、アイデアスケッチで強いものは、大きくしてディティールを加えても変わらず強いということが言えます。お化粧に酔ってしまうことはないのです。

原野さんの描いたアイデアスケッチが本書に掲載されています。とても小さくてシンプルな絵ですが、ここにアイデアの芯が詰まっていることが感じられると思います。ぜひ観察してみてください。
ところで、アイデアが強靭であれば、コミュニケーションの合理性ということを軸にすると、ディティールはやる必要がないのか、という向きもあるかもしれません。僕は2つの意味でそうではないと思います。その2つの意味とはなんでしょうか?その答えはいずれどこかで…!

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1枚のポスターにこのカット数(ほんとはまだまだあるそうです)!原野さんはアイデアもディティールもこだわる、真性のディレクターだったのでした