第3回 「抽象的」を具体的に考える。

こんにちは。3回目になりましたので、そろそろ書籍の具体的な内容にも触れていきたいと思います。
この本はグラフィックデザインに特に重要だと思う知識を「形」「色」「文字」「写真」「レイアウト」「印刷」の6章を使って網羅していこう!という欲張りな一冊です。まずは、第一章の「形」について。

ある考えのもとに形をつくる行為を「造形」といいますが、グラフィックデザインではあらゆる場面に「造形物」が登場します。会社のシンボルもそうですし、デザイン全体の構図だって「形」を意識するかどうかでまるで変わってきますよね。そんなミクロからマクロまで全ての形についての考察です。

ここで取り上げている技法の一つが「抽象化」です。抽象って聞くとなんだか「フワフワした曖昧なもの」って考える人がいらっしゃるのではないでしょうか?実はその解釈は間違っています。

抽象化とは「ある対象(これが「具体」ですね)から自分が注目すべき要素を抜き出して、後はきれいさっぱり捨てること」なんです。ちなみにこの捨てるという行為を「捨象」といいます。「自分が注目すべき」ってとこが重要で、これは「自分が対象に何を見いだすか?」という言葉でも置き換えられます。「抽象化」による造形は自分が対象をいかに深く見ているか、が試されるのです(おおげさ?)。

デザインの訓練でなぜデッサンが重要かって、別にリアルに描く技術が必要なわけじゃないですよね。ようは「自分が与えられた視覚世界から何を見いだすのか」ってことなわけで。客観性が主軸であるべきデザインにおいて、主観がどうしてもにじみ出てしまう(良い意味で)のもこの部分が鍵になっていると思われます。

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adidasさんSMBCさん、どちらも僕が大好きなシンボルです。使わせていただいてありがとうございました!

この形の章には他にも関連する重要なキーワードを忍ばせました。「記号論」「ゲシュタルト」のような哲学心理学領域からの引用もありますし、「点、線、面」や「幾何学形態」「文字と造形」などの、より実際的な項目もあります。

僕はシンプルな形が好きで、魅惑的で突き詰められた形に出会うと胸がドキドキいたします。そういう形をどうやって生み出せば良いのか、よく考えます。魅力的な形を作る力は、魅力的なシンボル、魅力的な構図、魅力的なイラストレーション、いろんなものをつくる力に変えられます。だから、この「形」の章を冒頭に置いて、グラフィックデザインという魅惑の世界のスタートを切りたかったのです。

ちょっと余談ですが、今の情報処理の分野では、ネットワークで集められたビッグデータの分析方法の研究が盛んです。あれも一つの「抽象化」として捉えられるかもしれません。ビッグデータをネタにしたメディアアートも増えていますが、多変量解析などの統計学(数学)とデザイン、そしてアートの領域が非常にあやふやになってきているのかも…。などと思います。

この本はあくまでもアートではなく「職能としてのデザイン技術の教科書」に拘っていきたいですけどね!(笑)