第24回 ロゴと一緒に売っているもの。

しばらくぶりの更新になりました。今回はシンボルとロゴ、それをとりまくVIの話です。

VIは「Visual Identity」の略で、視覚的な自己同一性の保持行為という意味であり、企業、団体、個人などがその性質(ブランドのイメージや企業理念など)をわかりやすく対外的に示すために、視覚的な方法で(戦略的に)行う行為のことです。会社だと、CI(Corporate Identity)、大学だとUI(University Identety)などといったりします。
その芯を握るのが、シンボルであったりロゴであったりするわけです。

シンボルやロゴの用語解説としてはこのブログの「第12回 りんごもパンダも犬もロゴじゃない。」を参照いただければと思いますが、シンボルやロゴなどを開発する上で、基盤になるのが、次の2つのデザインプロセスだと言えます。

1つめが思考のプロセス。
デザイナーは何もないところから思いつきで、シンボルやロゴを制作するわけではありません。対象となる企業なり、団体なりの顔となるわけですから、先方がどのような性質を持った企業なのか、どのようなことを伝えたい団体なのか、またそこから派生するコミュニケーションはどのようなものがあるか、それをある程度の時間をかけて掴み取っていきます。
デザインのソースは全て先方にあるわけです。それを経て生まれたものには、説得力のある「コンセプト」が付随します。

2つめがクライアントとのプロセス。
シンボルやロゴはクライアントにとって、重要なコミュニケーションの武器ともいえるものですから、その決定には慎重さが必要とされます。だからこそ、お客さんもじっくり、納得いくものを選びたいはずです。
最後に採用されるのが、たった1つの案なのに、なぜ途中、何十案も提案したり、何度も検討を重ねたりするのでしょうか?それに対して疑問に思う人もいるかもしれません。

このように考えてはいかがでしょうか?「デザイナーはクライアントに対して、シンボルやロゴという最終成果物、そして、それに付随する「ストーリー」を売っていると。ものづくりというのはその工程自体が楽しいものです。クライアントがそのプロセスに参与することで、クライアント自身、自分たちはどうあるべきなのか?ということを自問するはずです。

この2点は、ともすればデザイナー、およびクライアント、つまり送り手の自己満足の世界のように捉えられがちですが、僕はそう思いません。

これらが何を意味しているかというと、デザインにコンテクスト(文脈)を付帯させていることなんだろうと思います。

たとえば、オープンしたばかり、小さなお店のシンボルが生まれました。一生懸命デザイナーとやりとりしたクライアントなら、お客さんとの会話の中にシンボルについての話が自然と混じるかもしれません。
たとえば、ある企業のロゴがリニューアルされました。経営者は尽力して作ったそのロゴの話をするとき、改めて自社を俯瞰して見つけた、未来に目指すべき方向を語るかもしれません。

ロゴやシンボル、VIに付随するあらゆる成果物は、コンテクストを受容する「器」のようなものだと考えます。

これを実践で見せてくれるのが書籍「デザインのプロセス」での佐藤浩二さんの章です。

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明快で実直な提案の例。ディティールと伝達すべき項目がきっちり紐付いています。

佐藤さんは「大企業」「個人規模」「行政」にわけて、それぞれのロゴデザインのプロセスを書いてもらいました。それぞれの進め方が少しずつ異なっていることも興味深いですが、抑えておくべき共通点が必ずあり、それを自分なりに咀嚼して読むとすごく楽しいです。

『ロゴデザインで大切なことは、クライアントの内にあるもっともよい部分をコンセプト化し、クライアントにもっともふさわしく美しい「カタチ」に集約していくということだと思います。』(「デザインのプロセス」P125より)

この言葉を受けて、佐藤さんの仕事のプロセスで一番大事なこと、ご本人に聞いたわけではないのですが、僕なりに見つけたキーワードはたった一言、「聞く」ということじゃないかなと思いました。
原石は全て、相手の中に埋まっているのです。