第26回 手のひらで生まれるストーリー。

章ごとにカテゴリを追いかけている「デザインのプロセス」の記事ですが、今回は小型グラフィックをとりあげたいと思います。

小型グラフィックはジェネラルグラフィックとも呼ばれますが、これは日本だけの呼称でしょうか、General(一般的、普遍的)という意味、どちらかといえば、ポスターや広告、空間、映像など「以外の」ジャンルという、作品カテゴリ整理のための用語だと思います。

ひとくちに小型グラフィックといっても、手に収まる、手にとるということが前提であれば、ほとんどのものが該当するわけで、DM、フライヤー、名刺などのステーショナリーなどに代表されるように多種多様のジャンルがあります。

グラフィックデザイン黎明期においては、花形の媒体はなんといってもポスターでした。しかし、DTPが浸透し、デザインがパーソナル、趣味嗜好に合わせた多様性のあるものに近づくにつれて、個に近い場所でコミュニケーションが取れる小型グラフィックに人気が集まってきました。

いまどきのデザインを学ぶ学生は、ポスターが作りたい!という人よりも、手にとれるもののデザインをしたい、と思う人の方が多くなっている所感を持っています。

手に取れるということは、ただの大きさの問題だけではありません。それは「手による操作ができる」ということです。操作といっても難しい話ではありません。DMだと、送られてきたものを手にとり、封筒から本体を取り出し、折りたたまれているものを開く、であるとか、遠くにあったものを手にとって目の前に引き寄せるとか、半ば無意識にやっているような行為。

見るという視覚的な部分、触るという触覚的な部分に加えて、この操作というユーザー主体の行為について想像できるか否かで、小型グラフィックのデザインの質は大きく変わるのです。

そんな小さい判型に宇宙がある小型グラフィックのページの執筆を、グラフィックデザイナーの酒井博子さん(coton design)にお願いしました。

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酒井さんのデザインはとにかくトライアル&エラー!描いてみる、切ってみる、折ってみる。

酒井さんは自身でイラストを絵が描かれたり、平面造形、色面、パターンを駆使して、写真などの素材がない中でも、美しいビジュアルを構築できる個性的なデザイナーです。

また、実物ができあがるまでを、詳細にイメージし、試作品を作ったり、予算的にきちんと収まるか、オペレーションをどうしていくのか、様々な検証を繰り返す様は、小型グラフィックだけではない、ものをつくりあげるプロセスをどう描いていくかという、根源的な部分を学ぶことができます。

小型グラフィックには無料でもらえるものがたくさんあります。受け取る側、ユーザーは全くそれにコストがかかっていないかというと、そうではありません。それが、必要とするものではない場合、処理の必要なゴミを受け取る(自分の空間財産を消費してしまう)コスト、また、開封したり、文章を読んだりする労力もコストです。

多くの小型グラフィックは、その見えないコストに対抗して、それでも欲しい、手にとりたい、開けてみたいと思わせるようなことを、人に対して想起させなければいけません。手の中に収まる小さな世界に、送り手と受け手の巧みな感情の引き寄せあいがあることについても、ぜひ、知っておいてほしいです。

さて、次回はいよいよデザインのプロセス紹介編の大トリ、フライヤー、高谷廉さんです。
(ただのフライヤーの章と思って読んだら怪我するでー)