第27回 すべてはつながっている。

書籍「デザインのプロセス」を章カテゴリごとに追いかけていますが、いよいよ最後の章まで来てしまいました。高谷廉(AD&D)さんの「フライヤー」のカテゴリです。

高谷廉さんとのご縁は遡ること約5年前、デザイン誌「+DESIGNING」の文字特集で、「タイポグラフィーを切って貼ってその場でポスターを作ってみよう」という企画を思いついたとき、一緒にこれをやってくれるデザイナーとして初めて連絡をとったのがきっかけでした。

それまで高谷さんの作品はデザイン年鑑や展示などで存じており、その繊細で大胆な作風が大好きだったこともあり、いきなり年鑑で電話番号を調べて飛び込みの電話をしてその場で快諾いただいたのでした(笑)。
そのときの作品が高谷さんが後に、JAGDA新人賞を獲る作品の一つにもなりましたし、そこから派生したワークショップを僕は全国の高校などでさせてもらっているという…。時間は続いていますね。

そういう経緯もあって、この「デザイナーの後ろに立ってデザイン作業を眺められる」贅沢な本を考えたときに、まっさきに参加してほしいデザイナーとして高谷さんを指名しました。
高谷さんを「フライヤー」カテゴリとしてお願いしたのは、物質性が高く、持って帰りたくなるような印刷物を作るマイスターだと思っていたことと、小さな広告物であるフライヤーというものに、ブランディングやデザインの本質や宇宙が隠されているのではないかという思いからでした。

その予想は、もちろん的中し、想像をはるかに超えた成果が得られました。
クライアントにとってグラフィックデザイナーは、訴求するブランドや商品などを包括的に面倒を見てもらえる、かかりつけの主治医のような存在で、グラフィックデザイナーにしても、一つの媒体しか見るのではなく横断的に関与することが理想的です。
本書「デザインのプロセス」という本は、分かりやすい入り口になるようにフライヤー、ポスターなどの媒体カテゴリで切り分けましたが、本来的なデザイン(アートディレクション)という意味では、この切り分けは適切ではありません。

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アナログ作業、ディレクション、デジタルでのオーサリング、あらゆる技法が組み合わされていることが見てとれます。

高谷さんはジェラート専門店「ジェラーティ ブリオ」のブランディングを構築するのに際し、クリエイターが使えるあらゆる手法(コンセプトメイキング、ビジュアルアイデンティティー、イラスト・フォトディレクション、タイポグラフィー、印刷加工ディレクション、そしてもちろんグラフィックデザイン!)を有機的に組み合わせ、一つのゴールへと線を引いていきます。
本誌を読むと、アートディレクションが魔法のような存在、そして、それを実行するための緻密な計算(手品のタネですね)がどのように構築されているかが、俯瞰してわかることでしょう。

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おそるべきロゴマトリクス!目がクラクラします。

特に、店名ロゴを決める際の「ロゴマトリクス」というプロセスは、少しずつ条件を変えて、その結果を記録し続ける、化学の基礎実験みたいだな、と感じました。ここだけに焦点を当てると淡々とした印象に感じられますが、本文を読み込むとそこには必ずクライアントとの「対話」と「情熱の交換」があることも見てとれるでしょう。デザイナーは対象をあっためて、冷やして、あっためて、冷やしてを繰り返すのです。

また、高谷さんのキャリアとして「東北芸術工科大学 彫刻科」卒であるという点がユニークであると思っています。彫刻を学ぶというのは、ただ形をつくるということではなく、世界を構造的に、あるいは抽象的に捉える視点を持つということだと思うのです。高谷さんの作り出すクリエイションは、一アイテムだけではその全貌は伝わりません。さまざまな要素が立体的に、重層的に組まれており、それはまるで美しい抽象彫刻を見ているかのようなのです。